バカマラソン3rd ~1日目~ By Y平

いよいよ始まったバカマラソン。
ノリで「白川郷に行こうぜ~」だなんて言っちゃった自分を恨みながらも、
有言実行。これぐらいやらんで、何がブロガーやねん。
ティアラガールブログぶっ潰すという気概でもって、出発した。
「名古屋~白川郷 200キロバカマラソン」の開始です。
「名古屋~一宮市」
たいしが自分から1:30集合とか言ったのに、
「すんません、1:40に着きます」とかいうメールをよこし、
結局2:00に来るという暴挙に出る以外は順調だった。
もこ
ちなみに僕の格好はこのようなモコモコ。
氷点下の世界でも十分に耐えうる防寒対策を施してきたつもりだ。
対するたいしはというと、ネルシャツにジーンズというカジュアルなスタイル。
「君、白川なめてんのか」と僕が突っ込むと、
「いやあ、ちゃんとコート持ってきとるってえ」だなんてニヤニヤ。よかった。
しかもなんかダサい靴履いてると思ったら、
この日のために買ったランニングシューズとか言うじゃない。
やっぱたいしはやる男だなと感心しかけたら、たいしがボソリと呟いた。
「今日おろしたやつだけどね」
靴擦れ万歳。
市内は強風が吹いてて肌寒かったが、走ってるうちにジンワリと汗が染み出た。
いいかげん暑くなってきたので僕はコートを脱ぎ、身軽なスタイルに。
脱いだコートがリュックに入らなかったので、リュックにくくりつけたら酷いことになった。
1
通行人が、「左デカッ!」みたいに笑うのがよく分かる。
つーかそれでなくても、二人ともリュックしょって、
「走ってますよ」オーラを出してるので、市内だとものすごく浮くのな。
一人は左がでかいし、もう一人は靴がダサいしで、
明らかに名古屋にいていい格好じゃなかった。
だもんで信号待ちしてると、ほんとに僕らを見て笑う輩がいる。
車の中から露骨に僕らを見るやつがいる、笑うやつがいる。
ファック、と思いましたねやっぱ。こっちは必死に走ってんだぞと。
てめえら車とか自転車とか乗って恥ずかしくねえのかと。ほんとにブチ切れでした。
なんか腹が立ってきたので、逆に見てるやつをジーっと気持ち悪い顔で
見返してやることにしました。前からケッタで走ってくる青年をジーっと凝視。
笑う暇を与えない凝視。目をそらす青年。目をそらさない僕ら。
伏し目がちに通り過ぎていく青年を見て、
「はっ、ヘタレが」なんて勝ち誇るのが楽しくてたまらない。
まあその横で、車の中から「あいつら何?」みたいに
ニヤニヤ僕らを見てる中年がいたりするんですがね。そんなに可笑しいか。
2
10キロぐらい走ったところで、僕らの調子も絶好調。トレーニングの甲斐あってか、全然疲れてない。
ももあげとかできちゃうぐらいっす。
そればかりか
「10キロって超楽勝だな」
「な。まだ全然足軽いし」
「考えてみると、200キロっつってもさ。10キロ20セットだと思うと大したことないよな」
「だよな。部活かよって感じ」
「行ける行ける、楽勝だわ」
「白川郷近い」
だなんていう、前衛的な会話が為されるほど僕らは余裕があった。
3
その後も相変わらず通行人に笑われるなどしながら、
僕らは小粋なトークを楽しみつつコツコツと走った。
だいたい8キロに一度ほど休憩をとり、ズンズン22号線を北上していく。
都市部は景色がつまらんので、走っていてあまり楽しくない。
関係ないけど一宮市はラブホが異常に多かった。
「岐阜県笠松町~関市」
4
名古屋から走ってくること30キロ以上。ここへ来てようやく愛知県脱出です。
僕らは岐阜県笠松町までやってきました。
まあね、下馬評どおり30キロすぎると割と疲れてきた。
とともに、夜になってきたおかげで精神的に疲れるものがある。
しばらく走ると景色に違和感が出てきた。夜になって景色はほとんど見えないが、
まわりがうっすら山のシルエットで囲まれているのが分かる。
「なんか……山に入ってきてね?」
「俺もそう思う」
5
ふと横を見やると、そこにおわすはホテル「ふもと」の文字。
ホテルですらこの先が山であることを示している。
やばい、夜に山に入るのはヤバイ。夜の山がいかに危険かを僕らは経験で知っている。
しかし……止まることはできない。まだ40キロ弱しか走っていない。
目的地は白川郷、200キロなのである。
4分の1も来ていないところで一日目を終えるわけにはいけない。
大分疲れてきた足に鞭打って、走る走る。途中、チョコレートやら
SOYJOYやらでカロリーを補給しつつ、人気のなくなってきた岐阜県をひた走る。
するとこのマラソン初めてのトンネルが現れた。正直ひいた。
当然のようにあるそのトンネルにひいた。僕ら徒歩なんすけど……
トンネル内を走るのは予想以上にきつい。なにせ空気が悪い。
長いトンネルでこもりがちの排気ガスが、トンネル中に充満していて、
走っていると非常に息が切れる。
通り過ぎていく車の運転手たちが、「なんで!?」みたいな顔して僕らを見ていくが、
もはやそんなことには構ってられない。
早く抜けたい一心で、いつもより速いペースでひた走る。

800メートル以上という、歩行者には長すぎるトンネルを抜けると、ガクンと疲れがやってきた。
距離にすると名古屋からすでに40キロ強。遅いペースとはいえ、
アップダウンのある山のふもとを走るのは相当きつい。
二人とも段々、口数が減っていき、「何でここにいるんだろう」という思いが膨らんでいく。
この思いが規定値を超えるとギブアップとなる。危険だ。
6
と、ここで救世主が現れた。漫画喫茶である。
なぜ、こんなところに漫画喫茶が……だなんて思ったけれど、
僕らはためらいもなく入っていった。汗まみれの獣臭い臭いを出しながら入っていった。

ほうほうの体で個室を1つ取ると、二人でシートにぐったりうずくまる。
正直に言おう。グロッキーである。たった40キロ。されど40キロ。
40キロ走って疲れない人間がいようか、いやいない。
これがあと4セット続くと思うと、もはや無理としか言いようがありません。
だれだよ白川近いって言ったヤツ。
「ハンバー……グ……定食……」力ない言葉で店員の姉ちゃんに注文を伝えると、
姉ちゃん、あからさまにひいてる。やめて、そんな目で見ないで。
姉ちゃんがいなくなり虚ろな目で、前にあるテレビをボーっと見ていると、
たいしが何やらゴソゴソしだした。
疲れてるはずなのに何やってんだろ、だなんて見てたら。急に
「プレステ2やろうぜ」
とのお言葉。
負けた。この男には勝てないと思った瞬間だった。
40キロ走ってきてなおプレステ2やれる剛の者、それがたいし。
「三国無双もあったよ」
やりたくない。
ものすごいたいしに絶句しながらも、運ばれてきたハンバーグを無心で食べる。
不味い。これだけ疲れてて不味いってハンバーグってレベルじゃねえぞ。
プリプリしてたら例の店員姉ちゃんがやってきて、
「隣の個室空いてるけどお、使う?」
だなんて言ってきた。なんでタメ口やねん。なめられてる。
そんなわりとダメな満喫で疲れを癒す僕ら。別々の個室に移り、シートで横になる。
しばらくすると、たいしが僕の個室にやってきて、
「疲れに効くクスリあるよ。いる?」
だなんて怪しい錠剤を渡してきた。僕に白い錠剤を手渡すと、
「こっちの黄色い錠剤は僕のだよ……こっちはあげられない。へへへ」
だなんて台詞を残して去っていった。
あいつロッカーだし、たぶんドラッグか何かだと思う。
三時間後、たいしのドラッグが効いたのか疲労はかなり回復した。
足が軽い。まだ走れるぞ。僕らは深夜12時、再び戦場(22号線)へと復帰した。
7
走っていて思った。まだイケる。全然足軽い。
さらに6キロ走った。寒すぎた。そして疲労云々より、
もはや精神が折れ気味になっている。寝たい。帰りたい。いやだ。
漫画喫茶があったので、ためらいもなく再び入った。
そこは普通に寝れるスペースがあり、シャワーまで完備。
僕らはそこで一夜を過ごすことに決めた。
野宿を決め込んでいた僕らにとって、それは天国のような施設であった。
そして、暖かいシャワーにうたれていると、また「白川超近い」だなんて気持ちになってくる。
もちろんそれは幻想であった。まだ4分の1っすか、まじっすか。
 一日目: 走行距離 50キロ弱  白川郷まで残り 約150キロ
地図↓
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