4月28日 精神科で説教をくらう

「そらね、あんた。奥さんとちゃんと会話しないとだめだよ」
 長野病院は精神科の診察室で、柳葉敏郎似の精神科医は呆れた顔でものを言っている。ギバちゃんの前で借りてきたネコのように縮こまり、「はあ」とか「そうですか」とか気の無い返事ばかりを返す壊れたPepperのようなのが僕である。
「仕事にやりがいがないとかねあんた。やりたいことだけやっていられる幸せ者なんて、この世で一握りぐらいしかいないように思えるけどね。あんたはその一握りになりたいと、まあ、そう言っているわけかい?」
 責め立てられていた。この医師の中で、僕は結婚生活に悩んでおり、仕事にやりがいを感じていない一健常者としてのシナリオを組まれていた。
「あんたはこの病院にきて、わたしらに何をしてもらいたいんですか? どうなりたいんですか?」
 幸せに、なりたい、です。喉奥のごく手前まで出かけた言葉を飲み込み、僕は黙り込んでいた。お門違いだ。幸せになるならないを相談するんであれば、精神科医ではなく牧師や神仏の像に吐き出すのが上策であろう。
 ギバちゃんはひどくいらついているように見える。あるいは自称精神病患者の擬態を看破せしめんとし、テクニックで患者に悪態をついているのかもしれない。挑発に乗ってくるか否か、その反応をさぐり、心の病の真偽を確かめているのかしらん。僕はそのようなことを思っていた。僕も同じくひどくいらついていた。
「とにかくね、本当に状況を変えたいんであれば、奥さんとの結婚生活を見直して、仕事を変えるとか、なんとかやってみないとね。うちじゃあどうにもならないよ」
 ギバちゃんがみのもんたに見えてくる。思いっきり生電話のコーナーテイストの話題をかれこれ30分、えんえんと続けているギバちゃん。人生相談@精神科。ギバちゃんがそんなものをやらされるのをウンザリしているのと同様に、僕もウンザリしていた。そんな話をしにきたんじゃないのは僕だって分かっている。
「すると、このような症状は、疾患ではなく環境にあると、そうおっしゃいたいんでしょうか?」
「そうそう」
 ギバちゃんの顔にMacBookの詰まったリュックをぶちまけたいという衝動に駆られた。ここでギバちゃんに暴行を働き、窓を割り、カルテをビリビリにやぶいてそれを食べればあるいはギバちゃんも僕を診る気になろうか。そんな妄想をしつつ、僕の正常なる理性が「さすがにそれは」と尻込みを促す。うん、正常である。正常なのである。
「ひとまずね。薬を変えて様子を見させてください。この薬、気分の波を和らげる効果、あるからね。それとこれ二錠、睡眠薬。どちらも夕方に飲んでぐっすりと寝てくださいな」
 ギバちゃんはみのもんたから急速に精神科医の顔に戻ると、事務的に説明をし出す。
「趣味は?」
 所在なげにカルテをつつきながら、唐突にギバちゃんが切り出した。何? なんて?
「趣味は?」
 繰り返すギバちゃんの顔には微笑が浮かんでいる。
「小説を書く事……ですかね」
「ほう。何の小説を書くのかい?」
「SF小説とかラノベとか」
「いいねー。SFかあ。売ったりしてるのかい?
「いえ、まだ本を作ったりはしてないですけど。Web上で公開したりとかしてますね」
「SFだったらあれかい? ○○○○(作者名失念)とか? 読むのかい?」
「ああ、まあ○○○○は存じ上げませんが、星新一とか筒井康隆とか」
「いいね。パプリカ?」
「あー、面白いですね」
 ギバちゃんの顔に初めて笑顔らしい笑顔が浮かぶ。愛想の無いキャバクラで、ようやくキャバ嬢との共通の趣味を見つけた30男の気分。与太話に花が咲く。40分何円とかで僕はギバちゃんとの時を買っている。無為な時を。
「するとやはり奥さんとの共同生活でそういうものを書く時間もない?」
「はあ、まあ」
 露程もそう言う気持ちはないが同意しておく。そもそも時間があろうとなかろうと書ける時は書ける。小説とはそういうものだ。ただただ早く話を切り上げたかった。
「何かをやりたい気持ちはあるのに、奥さんとの共同生活でそれが妨げられていると。はあ、やっぱりね。こういうことは一度奥さんとじっくり話してみるに限るよ」
 話すって何を?
「それじゃああれだ。うーん……5月7日の午前。またね、診察に来てくださいね。今日はもういいですよ」
 カレンダーを指差しつつ目を伏せるギバちゃん。もはや僕の顔を見てさえいない。
「はい。ありがとうございました」
 僕は受付で薬が出てくるのを待ちつつ人間失格を読む。愛想の悪いギバちゃんだったが気分はなぜか晴れやかだ。精神病者として扱われなかったこと。針のむしろのような気まずい診察室。まるで虫歯もないのに歯科医に来て、歯石も歯垢もないときて、「さあどうしよう。何をしましょうか?」と困惑顔の歯科医を見た気分。全てが健常である事を示していた。社会になじめないのと同様に精神科になじめなかった。しかしなじめないことがプラスに感ぜられたのは初めてである。
 働こう。ただそれだけを思った。
 夜は新しい薬が効いたのか23時に寝る事ができた。夢を見た。とんでもなく楽しい夢だったはずだが翌朝起きたときには何を見たのかさっぱり思い出せず、ただ顔を洗って歯を磨いた。昨日のギバちゃんにえぐられた記憶を思い出しながら、しかし自然と笑みがこぼれ活力に溢れていた。今日は美容院に行く日だ。

4月27日 紹介状を書いてもらい精神科に電話をする

 昨夜も1時に寝れた。が、寝すぎて起きたのが10時半。一回も目覚めずに安眠を欲しいままにしたのは良い事だが、いかんせん今日は通院の日であった。11時に受診だったため10時半に目覚めた時点でアウツ。「寝坊しましてー」云々を病院に伝え時間を変えてもらう。ああ、もう、久しぶりのこの感覚。昔、震える手で「寝坊しました……午前半休お願いします」と上司に伝えた時以来の気まずさ。
 通院。といってもこの心療内科に通うのはおそらく最後であろう。今日は他の病院のセカンドオピニオンのための紹介状をもらう日だった。「もう予約はしたの?」とか「眠れてる?」だの最後の最後でなんだか親切な主治医。いつもは30秒で診察終わるくせに最後だけはめいっぱいの優しさが感ぜられたのはただの感傷だろうか。思えばここに来なければ休職することもできなかった。そう言った意味では健常なワールドからメンヘラのワールドへINした最初の地であり、いかばかりの感謝の念も沸く。「じゃああとは向こうのお医者さんとキチンと話してがんばってください」と語る寂しそうな主治医の背中は、元・受刑者が刑務所を出る際に看守が言う一言「もうこんなところに来るんじゃないぞ」テイストの労いの言葉を発しているようでしんみりとする。「はい、今後は真面目に働きます」っつって心で返事をする。まあ別の刑務所もとい精神科に行くわけだが。
 紹介状を書いてもらったとてすぐに転院できるわけではない。事前診療が必要らしい。面倒面倒。本当の重症患者はこの時点で心折れてる。札駅のモスバーガーに腰を落ち着け、珈琲を飲みながら電話する。今度の刑務所は白石の長野病院というところだ。
 電話をすると、なんとかワーカーだの専門のカウンセラー的な人が電話に出てきた。事前診療と称していくつか簡単な質問を受ける。その中で「具体的にどういった症状でお悩みですか?」と聞かれ返事に窮する。どのような症状? はて? そういえば僕は何に悩んでいるんだろうか。「難しいですね……」と思わず返す。事前診療は就職試験に似ている。個性的でホニャララワーカーの心をうつ、いや鬱、ハートレスなエピソードをアッピールしなければ入科することすら能わず。これは難関ですよふむーん。
 不眠? 鬱? 自殺願望? しかし浮かんでくる対案はどれも空々しく、現実味がない。あれ、今俺別に悩んでなくないか? これはは抗うつ薬の効果だろうか。まるで志望動機を聞かれたのに別のメーカーに内定が決まっている就活生のよう。薬が切れたときに電話をかければよかったと思うが薬が切れたら電話をかける気力がわかないの負のループ。比較的元気なときに、元気じゃないときの症状を聞かれる苦しみ。
 「薬が効いている時は元気なんですけど切れるとどうにも気力がわかないというか……はい、生きる気力がね、沸かない的な感じで」とモソモソと返答をすると、となりでモスチーズバーガーを食べてる男がぴくっと反応する。モスチーズ男は心の中で僕の髪をかき分け額をあらわにすると、焼きごてでもって何かを烙印する。ばあん。僕の額には「メンヘラ」のタトゥーが出来上がる。ついでに胸や肩にも「落伍者」だの「社内ニート」だの烙印を押してくれとせがむ僕。モスチーズ男の心の中の僕はシャツを脱ぎ捨て半裸になる。さあ押せ、よし押せ。精神科を受診するに足る烙印をじゅうじゅうと押し付けてくれ。早く。
 結局具合のいい烙印は見つからなかった。いっそのこと腕に大名行列がはう設定で行こうかと思ったが筒井康隆や夢野久作のオマージュと思われてもシャクなのでやめた。僕は電話口で十把一絡げのいわゆるメンヘラの典型症状を思いつくまま披露。それはステレオタイプにはまった「御社の自由な社風が気に入りまして」「テニスサークルの副部長をやっておりそこで培ったリーダーシップを」「アルバイトでリーダーをやらせていただきまして」云々、1000人いたら750人ぐらいが披露するであろう退屈な自己PRのごとく心にもないことを並べ立て、これで御社(精神科)に入れるかしらと不安になる。精神科を受診出来るかどうかですら勝負がある。やはり本当のメンヘラはこの難関な入科試験にそも耐えられないのではあるまいか。事前診療で個性的でもっともらしい自己PR(症状)を披露できた健常者のみが巣食う場所が精神科なのではあるまいか。そこでは「メンヘラ」という大義名分を勝ち得た社内ニートがおいしい食事と自堕落な生活をむさぼり不正ナマポ受給者よろしく仕事をせずとも生活ができるこの世の春を謳歌しているのではあるまいか。そんな妄想も捗る。
 とまれ必死の自己PRの末、どうにかこうにか明日診察を行ってもらえることになった。やったあ。
 やったあ? この場合喜んでいいのだろうか? 複雑である。いっそのことなにがしワーカーから「あなたはとっくに健常ですので受診の必要はありません」とバッサリ斬り殺されていた方がよかったのだろうか。この電話面接を成功させてしまった事、それ自体が自身の不健康性ないしはメンタル不調を盾に惰眠を貪るための市民権を得る愚者の証明のようでなんとも気分が悪い。受診できても鬱、健常であっても卑怯、前門の虎後門の狼とはまさにこのこと。どうしろっつーんだおい。
 とまあ色々書いてきたが、チャンチャラワーカーの方に、おべんちゃらはいい、この日記を見よ! そして僕が不健康かどうか吟味したまえ、とブログのURLを叩き付けて退散したい気持ちになった。
 確実に元気になってきてる。元気に鬱々とできていて気分がよい。

4月26日 ブロック崩しゲームを作る

 昨夜は1時に就寝。2日連続で安眠出来ている。が、起床は12時半。ねてもねても眠い。ああ失敗したなあと起き抜けにため息をつくと、妻から「休みの日だからいいんじゃない?」と言われる。確かに。なんで起きねばならないと思っているんだろう。僕の人生には「ねば」「ねば」が溢れている。これが病気を悪化させる一因になっているのは間違いない。せねばならないことなんて何も無い。人生の目標は「ねば」に囚われずひたすらに生きるだけだ。
 起きて妻と珈琲を飲みつつ本日もプログラミング。作りかけだったブロック崩しを完成させる。調子に乗ってWebに公開した。下記でPCからのみ遊べる。
ブロック崩し
 さらにプチ実況もやってみた。


 我ながら難しすぎる。ボールの初速が絶妙に早いのと、勢い良くボールを叩くと物理エンジンのせいでボールが超速になるのでとてもじゃないが全部ブロックを崩すのは無理。
 クリアーはできないがひとまずは単純なゲームが簡単なプログラミングで作れるのでUnityは面白い。さて次は何のゲームを作ろうか。
 夜は妻が飲み会で不在のため茶太郎と二人でお留守番。茶太郎と二人、緊張する。何が緊張するってグルーミングとへやんぽがある。いつも妻と二人がかりで茶太郎を捕まえてグルーミングをしているため独りでやれるかが心配である。
 グルーミングの時間になった。案の定ケージの中で茶太郎が逃げ回り捕まえられない。むなしくエプロン姿のまま茶太郎を捕まえようと努力するが無理。おまけに指をかじられて軽く負傷した。ああ。心がポキッとね。折れました。
 グルーミングは断念してへやんぽだけさせる。へやんぽ中、茶太郎君は機嫌良くリビングを駆け回り、僕の足の周りをグルグルまわり「遊ぼうよ、遊ぼうよ」と催促。かわいいねー。ウサギってほんとにいいものですね。否、これは遊ぼうよのサインではなく「交尾させろ」のサイン。盛り時期の茶太郎は俺の足をダッチワイフかなんかと勘違いしている。茶太郎はブレーキランプを5回点滅ライクに僕の足をつつきつつき、僕に醸し出すサイン「こ・う・び・さ・せ・ろ」。さぶイボが立つ。この色ボケウサギめ。先ほどかじられた恨みは忘れていない。
 晩飯を食べタバコを吸い吸い独り佇む。久しく忘れていた不安感が沸いてくる。何のために生まれて、何をして生きるのか。分からないまま終わる、そんなのはいやだ。とはいい歌詞を作ったものだ。無為に生きている感がすごい。いやしかし、誰も有意義に生きている人なんていないのではないか。大半の人間は糞して寝るだけだ。好きな音楽を聴いたり、好きなゲームをしたり、好きなカフェに行ったり、何も生み出さないまま過ごしている。それで幸せを感じている。それが悪い事だろうか。否。悪くない。そもそも何か生み出さなければならないという発想自体が自らの首をしめている。例え僕が茶太郎のダッチワイフとしてのみ、その生を受けたのだとしてもその生には意味がある。明日も茶太郎の肉便器として生きる。生きるのだ。

4月25日 劇団四季 CATSを観に行く

 昨日の昼寝しない作戦が効いたのか久しぶりに早く寝る事ができた。夢も観ず。熟睡出来たと思われる。
 起きたら朝10時半。しかしすげえ眠い。早く寝ても眠いものは眠い。どうすればいいのか。
 とにもかくにも今日は結婚記念日である。結婚して2年。あっという間だ。苦しい時も多かったけど良い事もたくさんあったような気がする。
 結婚記念日だからというわけではないが今日は劇団四季のCATSを観に行った。なんだかんだ劇団四季は毎年見てる気がする。ライオンキング、美女と野獣、どれも面白かったのでCATSも期待していた。
 したら寝た。だってストーリーないもの。野良猫集団の中で今年のMVP(ジェリクルキャッツとかいうの)を決めるみたいなストーリー。だれがMVPにふさわしいか候補者皆が一芸を披露していく。劇と言うよりはショーを見ている感じ。歌って踊って、素晴らしい音楽。さあ誰のパフォーマンスが一番いいでしょうと。そう、パフォーマンス自体は素晴らしかった。でも僕は美女と野獣ライクなストーリーもあるのかと思って観に来てたからストーリーないんだって気づいた時は既に食傷気味。まあ純粋なミュージカルってそういうものなのかもね。でも終わったときにはなんか爽快感があった。だからやっぱりすごい舞台には違いなかった。ただストーリーがないってだけ。In to the woodsに近い物がある。ストーリーとしてはつまらないけどすごい的な。いやそもそもストーリーは重要じゃない。最初からストーリーに力は入れてない感じ。
 劇団四季を観た後は札駅でショッピングと洒落込んだ。4年ぐらいはいてるチノパンがさすがにくたびれているので新しいパンツが欲しかったのだ。んでショッピングしてたら僕のクタクタチノパンがちょうどその店のブランドだったらしく、「あ、そのパンツ、すごいですね。懐かしいですねー!」と店員さんに言われた。懐かしいって。ギリギリな発言だと思う。
 晩飯にはなまる寿司を食って帰ったら10時。ウサギの茶太郎君がご立腹。いや、ご立腹を通り越して体調崩してた。微動だにしない。「なんでもっと早く帰ってこないんですか……?」と無言の抗議。うんこも小さくなっててびびった。こいつちょっと遅く帰っただけで毎回こうなんだろうか。ホーランドロップは特に寂しがるらしい。寂しがるだけならいいが、体調まで崩すのでタチが悪い。ごめんごめんときわめて低姿勢にご機嫌とり。お土産に買ってきた乾燥ブロッコリーの葉とパパイヤの葉をあげたら、うますぎたのかソファーにオシッコを漏らす始末。なんて感情豊かな動物なんだもう。ほんとめんどくさい。そういうところが可愛いとか全然思わない。ほんと大迷惑です。プンプン。あーん茶太郎くーん。

4月24日 昼寝を我慢する

 昨晩も全く寝られず。おそらく寝たのは午前3時ぐらい。いい加減体にくるものがある。薬が云々とか症状が云々とかではなく昼寝のし過ぎかと思われる。
 とはいえ朝8時に起きて妻の見送り完了。すげえ眠かったがここで寝ると夜寝れないループにはまりこむので珈琲をガンガン飲んで起きてた。今日の目標、「昼寝をしない」。まさか30になって本日の目標に「昼寝をしない」というチャイルディッシュな目標が来るとは思わなんだ。もっとこう、「売り上げ20件!」とか「毎日アプリ作ります!」とか「1ヶ月で30冊本を読みます!」とかそういう意識高い系のあれじゃないの30の目標って。昼寝て。
 んで、眠気を覚ますためにずっとニコ動のゲーム実況動画とか見てた。面白かったのはゲーム内で食べた食材しか食べない縛り系の実況。ゲーム内で晩ご飯でーすとかいってヒラタケ食ってるんだけど、現実世界でもヒラタケ食ってるの。しかも生で。食べないとゲーム内でも現実世界でも死んじゃうから無理して食べてんの。こういうキチガイは好き。
 夜は茶太郎と遊びつつUnityでゲームプログラミングしてた。あれだ、プログラミングの腕が確実に落ちている。なんつーかメソッドの勘所とかが鈍ってる。「こういうAPIがあるはず〜」とかそういう予測する腕が落ちている。効率上がらず。ひとまず、リハビリでボール崩し作ってた。


 やりかけになってるインベーダーを早く完成させたい。あと今日こそはちゃんと寝たい。

4月23日 ジムでヌシと会う

 昨晩は23時に床についたが全く寝られず。結局寝たのがたぶん2時ぐらいになってたと思う。
 夢を見た。どういった夢か忘れてしまったが愉快な夢だったと思う。しかし愉快な夢と言えど連日見るのでやはり眠りが浅くなっているのだろうか。睡眠薬とかちぃとも効いてる感じがしないので、やはりあの主治医はヤブだと思う。
 起きたのは12時だった。今日は妻のお見送りができず。睡眠不足のせいか、夢のせいか気分は悪い。シャワーもあびておらず汚い。ひとまずシャワーを浴びようかと思ったが、どうせシャワー浴びるんならこのままジムに行って汗を流してからシャワー浴びた方が効率いいんではないかと思い始める。シチューをかっこみ寝間着のジャージのまま区営のジムへ行く。歩いて2分。
 ジムではいつものメニュー。最近は週2で行っている。肩と僧帽筋をメインにこなす。ふと、周りに目をやるといつ来てもいるおじさんが筋トレをしている。ほんといつ行っても出会うので、僕はひそかにこのおじさんのことを「ジムの主(ヌシ)」と呼んでいる。ヌシは筋骨隆々で、いつも胸系のトレーニングばかりやっている。いやちょとまて。なんで木曜の真っ昼間からこのヌシはいるんだろう。仕事何やってるんだろう。ニートなのかな……と思いつつヌシの美しい筋肉を眺める。しかしよく考えてみたら向こうも俺を見てそう思ってる可能性大である。「平日の昼間からこの青年はなんだ?」とか思われてる。もしかしたら俺もヌシ呼ばわりされているかもしれん。
 ジムの帰り道、散歩をする。今日は6月上旬ぐらいの気温があったらしい。暖かくて気持ちがいい。筋肉が適度に張っているのもいい。関係ないけど体脂肪測ったら13%だった。メンタルはアレなのに体だけは強靭です。復職した折には「Y平、でかくなったな(物理的に)」と思われたい。
 15時、帰宅。シャワーは結局あびなかった。食器なんやらを洗いつつ、落語を聴く。時ソバ、元犬、薮入り、化け物屋敷なんかを聴いた。柳家喬太郎面白すぎた。円楽は別に面白くない。
 落語を聴いて楽しかったが、楽しいと同時に俺も落語やりてえと思い始める。柳家喬太郎の喋りにあわせて俺も倣って噺してみた。全然できない。レベルが違う。すぐ同じ土俵に立とうとする性格。これが厄介である。俺は演劇でも落語でも、すごい人を見ると俺もこのぐらいやれるはずと思うタチである。んで、実際やれなくて凹むのである。こういう性格も病気を悪化させるアレなんだろうか。といっても、円楽ぐらいならできる気はしている。喬太郎は無理でも円楽ぐらいなら。
 夜は妻と茶太郎と遊んだ。ちょうど茶太郎も生後4ヶ月になるので盛りがついてくることである。茶太郎が俺の足にしがみついて腰をカクカクさせる。すごいイヤだった。小さいチンコが足の指にあたるのがイヤだった。イヤだったけどなんかこう女の子の気持ちが少し分かり面白くもあった。4、5回にわたる執拗な茶太郎ピストンに嫌気がさし、「ああーん、それ以上は駄目え」と嬌声をあげると妻に爆笑された。良い夜である。これでぐっすり寝られれば言う事ないのだが。

4月22日 セカンドオピニオンを希望する

 昨年の9月から軽い鬱症状と診断された。1週間の休養でひとまずは通院しながら復帰した。しかし今年3月中旬に内容も何も無いただただ交通費と労力の無駄な研修に行った際に病状が悪化。その後休職している。
 病状が悪化した日。研修を早退して家に帰っている最中、何度も電車に飛び込みたくなる衝動が起こった。足取りも重く、少し歩いては休憩してを繰り返し、猫背になりながら帰ったのを朧げながら覚えている。帰宅した後、妻に研修を早退した事、休職することを伝えつつ、茶太郎(うさぎ)と遊んだりなんかしていたらしいが、まったく記憶にない。その日の最後の記憶は、東豊線で飛び込んだら楽になるんだろうか、いやいやしかし、自殺すると三途の川のほとりで石を延々と積む事になる、それだけは避けたい、などと点字ブロックを見ながら思っていたこと。あとはほとんど覚えていない。死んだ後のことまで考えているあたり相当キテいたと思われる。後で妻に聞いた話だがその日の僕は目の焦点があっておらず、醸し出す負のオーラがえらい事になっていたと、あたしも多少なりともそれにやられたとのことである。鬱は自分だけでなく周りをもとても不幸にする。イヤあね。
 ともかくも休職して1ヶ月が経った。病状はどうかと言うと、平行線と言った感じである。仕事しようと思えばできるけど、人と喋りたくない。いや、ほんとはすげえ喋りたいんだけどうまく喋れないといったアンバイである。よくなる気がしない。というか良くなるってそもそもどんなだっけ? 良い時の僕ってどんなだっけ? と混乱している状態。
 ひとまず医者からは日記を書いたらいいと言われたので、今日から日記を書きたいと思う。鬱病日記。本日の気分やら、体調やら、やったことをダラダラと記述していこうと思う。
 願わくば、鬱病に悩む人や、周りにいる人などに、鬱病の人がどんなことを考えているかが少しでも伝えられればと思う。


4月22日 セカンドオピニオンを希望する
 昨晩は不安感に苛まれ全く寝られなかった。ウジウジ考えると症状が悪化する事は分かっているので、必死に何も考えないようにしていた。「無感になろう」とずっと考えていた。そうすると幾分か気分は安定したが、ふと、無感になったら何を頼りに生きていったらいいのだろうと不安になった。負のスパイラルである。
 そんな不安感の中で新作の小説の構想を思いついた。ので不安感と小説妄想とをないまぜにしつつタバコ吸い吸い起きていたらいつのまにか午前4時になっていたため慌てて寝た。
 朝は妻が茶太郎に話しかける声で起きた。7時ぐらいか? 変な夢も見ていた。義叔母さんが小学校の教師をしており、僕は生徒となって文化祭の準備をするという内容だった。夢の中の義叔母さんはとても面白く、小粋なトークをして過ごし楽しかった。その夢の内容を妻に話そうとしたが寝ぼけていたためあまり伝わらず。仕事の妻を見送って再び寝た。朝イチは必ず妻を見送ることにしているが、いつもながら少し惨めな気分である。ヒモになったような感覚。ヒモをやれる人は本当に凄い。鋼の精神力だと思う。
 9時頃。本当はずっと寝ていたい気分だったのだが薬を飲むために起きた。朝ご飯をつくるのはおっくうだったため生卵に醤油と一味をかけたのを飲み込む。生卵を飲み込んでいるとロッキーみたいな気分になるのでなんだか良い。起き抜けは夜更かしのおかげで最悪の気分だったが、薬を飲んでシャワーをあびるとすっきりした。
 通院のため外へ。外は抜ける様な青空で暖かい。ますます気分はよくなってくる。しかし少し気が重いことがある。今日は主治医へセカンドオピニオンを申し出るつもりだったからだ。
 初めからあまり主治医が信用出来なかった。僕の診察をしている最中、度々こっくりこっくり寝るし、しゃべりははっきりしないし、何か言っても薬を増やすことしかしない。診察はひどいときは30秒ぐらいで終わる時があった。とにかく人の話を聞いてくれず、常にムスッとして眠そうで、主治医自身が診察受けた方がいいんじゃないかと思っていた。
 病院に着く。主治医はいつもより機嫌が良く、何やら色々話しかけてきた。僕が書いてきた日記を見て「落語好きなの?」などと笑みを浮かべるシーンも。後にも先にも笑顔を見たのはこれが初めてである。なんでセカンドオピニオンしたいって言おうと思ってるときに限ってこうかね。とタイミングの悪さにむしろムカついた。診察の最後に、「セカンドオピニオンをお願いしたいと思っているんですが……」と恐る恐る切り出すと、主治医「えっ!?」と驚嘆。えっ!? じゃないよ。何意外みたいな反応してるんだ。
 先方の病院に医療情報提供書の提出が必要なためその旨を伝えると、不承不承引き受けてくれた。ただ、書類作成に時間が必要ということでまた来週の月曜に来るようにと言われる。めんでえ。病院を変えるだけでも割とめんどくさい。引っ越し、転職、休職、世の中何をするにもめんどくさくなるようできている。そりゃ環境を変えようとしない人もでてくるわな。