茶太郎、孤独じゃないグルメ

こんにちは0507
 こんにちは、茶太郎です。世間はゴールデンウィークで浮き足だっておりますな。主人夫婦もご多分に漏れず休みということで、どこかへ出かけると思いきや、ずっと家で三国無双をやっております。昼間、武将の無骨な声で「敵将討取ったりぃ!」などとやられるものですからオチオチ寝てもおられません。やれフェイスブックやらツイッターなどでは、行楽の様子を楽しげにアップしている一方、この夫婦は薄暗い部屋で天下三分の計を描いている。三国志好きの僕としては天下三分の計はけっこうだがそれでいいのか、あなた達のゴールデンウィークは仮想世界の三国で終わってよいのか? と小一時間夫婦に説教をかましたくなるものです。しかし声帯を持たぬ僕の力では足をダン! と踏みならし主人の不健全を戒める程度しかできません。
 しかしそんな僕の必死の諫言が効いたのでしょうか。今日は夫婦二人して出かけたようです。「野草を」とか「茶太郎が食べれるのは」とかチラホラ何か聴こえてきます。行楽は結構ですが、イヤな予感がしました。そしてその予感が的中したのです。
大量の野草
 帰ってきた主人達がようようと僕に見せたのは大量の野草でした。まさかそれを僕に? 主人達は僕をナチスドイツの人体実験の延長者とでも考えているのでしょうか? 毒草が混じってるやも知れぬ、えも知れぬ細菌が潜んでいるやも知れぬ、なによりも僕達ウサギ族が憎んでやまぬ犬猫の糞尿などが付着している可能性もある。そのようなものを僕に食べろと、そういうわけです。主人達は無慈悲にぐいぐいと僕の顔に謎の野草をおしつけてきます。「おいしいよー、これは体にいいものだよー」などと甘い声をかけてきますが、その主人達の目が僕にはエドゥアルト・ヴィルツの目に見えます。アウシュビッツ強制収容所の悲劇は札幌で再び起こらんとしているのです。総毛立つ想いでした。
ギシギシ
 第一実験は「ギシギシ」と呼ばれる野草でした。なるほどウサギが食べれる野草として有名とのことですが、油断はできません。僕は主人達のモルモットとして震える鼻をヒクヒクさせながらひとかじり、やってみたわけです。
ギシギシ2
 ふむ。悪くない。マズかったらせめてもの抵抗として連続足ダンで一矢報いる覚悟でしたが拍子抜け。むしろ美味い。しかし油断はできません。人体実験もといウサ体実験をする場合、一気に殺してしまう恐れのある劇薬を最初に持ってくる道理はありません。油断せず、死を感じた瞬間逃げる覚悟で次の実験を迎えましょう。
オオバコ
 次は「オオバコ」という野草でした。調べてみたところ我々ウサギ族が大好物ともっぱらの噂らしい。またしても拍子抜けです。これならば生き抜けるやも知れぬと安堵しつつオオバコの匂いをかぎます。
オオバコ2
 危うく口にするところでした。これは食べ物ではない。僕の直感がそう言っています。しかるに主人達は「ほらほらー、ウサギさんの大好物だよー、みんな食べてるよー」などと猫なで声を出していましたがそういうことではありません。ほら、関西人に納豆をすすめるようなものです。源平合戦で言えば僕は平家側というわけです。源義家が納豆を食していると知らば、我々平家ウサギがそれを食べる道理はありません。
笹
 僕が平家没落の歴史を再考し諸行無常の憂いを覚えている最中に次の野草がきました。今度は「笹」らしい。笹って。あのパンダが食べるやつでしょう? それってそこら辺に生えている物なんだ。僕は少し主人達の努力に感心しつつ恐る恐る口に含んでみました。
笹2
 うまい。なんだこれは。こんなに美味い物をパンダは食べていたのか。頭をガツンとやられた気がしました。それとともに、この不審なウサ体実験はもしや、実験などではなく本当に人間の好意によって構成されているのでは? 僕の疑念は氷解を始めたのです。その後の僕は従順でした。
すぎな
 「すぎな」。食べれるが美味しくない。稗や粟を食べている感じ。とでも形容しましょうか。
ふき
 「ふき」。
ふき2
 天ぷらにでもしてあなた達が食べればよろしかろう。
もっとないのかね
 もっとないのかね?
 その後も主人達から種々折々様々な野草を馳走になり、僕はすっかり食によって籠絡されておりました。あれほど怪しかった主人達も今ではなじみの酒場のオヤジのように感ぜられる、あるいは気の効いた旬の物をそっと膳にすえてくれる料亭のような、そんな心地さえしておりました。やはり疑ってばかりでは人生もといウサ生はなりません。信義の心が大事だと言う事を先達、三国志を読み返した際に心に刻んだ事をすっかり忘れたのか茶太郎! 劉玄得が没してもなお蜀を支え続けた孔明のように僕は成る! その感動を、義を、忘れたのか茶太郎よ! と自身を叱り、恥じました。
かぶ
 しかし僕が愚かでした。最後の最後でカブの葉が出てきました。
かぶ2
 カブは食わないって何度言えば分かるんだクソッタレ! うぬらは白痴か! しかもわざわざ干してシナシナになったヤツを出してくるたあ、どういう了見だい! 生は食わぬが、干物なら食うであろうって魂胆かい!? だんなあ! イカ嫌いのやつがスルメイカなら食べれるってーのかい? そいつはどういう道理だい!? ダン! ダン! ダン!
かぶが景観を壊す
 足ダンは虚しく響きますが主人達は一向に解しませんでした。しかもあろうことか、
かぶが景観を壊す2
 こうしてケージの横に見せしめのようにカブを固定し始めたのです。「そのうち腹へったら食べるだろう」とか言ってます。ウサギなめてんのか。景観も最悪。僕がトイレの位置などを自らずらしたりして絶妙に設計した空間がシナシナのカブで汚されます。多分風水も良くない。南東にカブは最悪の風水ですよ多分。これで病気になったら全部主人達のせいですよ。一刻も早くこれを撤去しなさい。僕は天安門事件の青年のようにただカブの葉の前に仁王立ちし、足をダン! ダン! ダン! と踏みならすのです。ダン! ダン! カブの葉反対! カブの葉反対! 原発も反対! ダン! ダン! ダン!


以下、茶太郎の手帳に記してあったメモ書き。
オオバコ : ×。食べる物ではない
フキ   : ×。人間が食べるもの
ヨモギ  : ×。餅にして食べる意味も分からない
ペンペン草: ×。ぺんぺん草も生えないって例えられるほどのThe雑草を持ってこられてもねえ
カブの葉干物:×。断固食べないをモットーに
スギナ  : △。何もなかったら食べるレベル
ギシギシ : △。まあまあだがペレットのほうがいいかなあ
シロツメクサ:○。美味。牧草のおかずにして食べたい
笹    : ○。パンダってうまいもの食ってんなあ
タンポポ葉: ○。ウサギ界ではスターダム的な食べ物らしい。その気持ち分かる
タンポポ干物:×。何でなんでも干物にするかね
タンポポ花: ◎。ウサギ界の三大グルメに入る。美味しんぼで究極のメニューとして出して欲しい

茶太郎、孤独じゃないグルメ」への2件のフィードバック

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    耳が片方立ってるのも愛らしい😊
    ボールを転がす姿はメロメロキューンだ💕
    そして、うさぎはシロツメクサとたんぽぽが大好物だったね🐰💡子供の頃、近所で買ってたうさぎがそうだった。
    血統書付きのうさぎがいることに驚いたなぁ✨

  2. SECRET: 0
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    M本パイセン
    うん。タンポポの食いつきったらすごかった。
    色々食べさせてあげるの可愛いね。子供のようでね。
    でもあんまり食べさせると水分が多くなって腹を壊すという、
    そういう繊細さも可愛く思える。
    そう血統書。あれがあったからめっちゃ高かった。あんな紙切れいらん 笑

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