ドクターストップタバコ

「ええ。100%死にますねー」
内科の診察室にてドクターの笑い声が響く。平然とした顔で「死」というキーワードを連呼する医者の前で、固まっているのが僕。
「ほらこれ肺。真っ白でしょー。慢性気管支炎ね。これ、タバコやめないと死ぬから。ええ」
また「死」。齢30にして死の宣告。僕の頭の上には1年とかいうカウントがポッコリと出て。このままタバコを吸い続けたらフエーヘッヘッヘッヘとゆかいな顔をした死神が僕の魂を抜いてご満悦にひたるという塩梅。
死。まじで? この歳で死を想起させるワードを医者から言われるとは。
ということで禁煙が始まったわけだが、この一連の医者とのやりとりを妻に伝えたところ、「私もチョコをやめるから、あなたもタバコやめて頂戴」ときわめて真剣な顔をして断チョコ宣言をする妻。禁煙。これは一生ものである。しかるにチョコは一生絶つほどのものではないのでは? と返すとしばらく思案したのち妻。
「クリスマスのチョコケーキ食べるまでチョコを我慢する」
「じゃあ俺もクリスマスまで」とのどちんこのところまで出かかったワードを飲み込み、喫煙防止の飴玉をコロコロしながら承諾する。
ということで「Y平、タバコ辞めないと死ぬってよ」という邦題でスクリーンの幕は上がる。今のところすごくよいです。空気はおいしいし、食べ物はおいしいし、なによりタバコのありがたみをヒシヒシと感ぜられます。タバコ。タバコ。TABACO。助けて。I feel TABACO. 体がTABACOを求めてる。ねえあんた、死なないタバコってないですか。もう限界なんですよ。先日なんか串鳥行った際に隣のカウンターでプカプカ吹かすタバカー(喫煙者のこと)の煙をふがふがと吸い込んでたからね。100倍も害がある受動喫煙でニコチン欲を満たそうとしてたからね。なんなら君がタバコを吸うからその吐いた煙をマウスツーマウスで僕にいただけると。非常に。ありがたいのですが。だめですか? 何? マウスツーマウスがだめ? じゃあてめえらのタバコ全部折るから覚悟しておいてくださいね。今後一切僕の前でタバコを吸いだしたら消火器でブシューってやりますんで。俺がタバコ辞めるのであればお前らもやめてくださいって話ですからね。妻なんか大好きなチョコを断つって言ってるんですよ。その心意気。無下にするっていうんですか? 僕はいいけど僕の妻の意志を無下にするたあどういう了見で? もうだめだわ。やっぱりあんたに消火器ぶっかけるから。ぶっかけられるのがヤダってんなら消火器で撲殺しますんで。ぼこって。